「人間中心」というキーワードのdiff

はじめに

このエントリーはこの記事は『「Diff」 DevLOVE Advent Calendar 2015』の9日目の記事です。

という、でぶっちの悲痛な叫びを聞いて、5日目に引き続いて2回目の登場となりました。

 

自己紹介

12/5に書いたばかりなので省略で…

株式会社ヴァル研究所のUXデザイナーです(雑)

 

今回のテーマ

自分は元々「人間中心設計」の専門家でもあるのでどうしても目に付いてしまうのですが、ここ最近、様々なところで「人間中心」というキーワードが散見されるようになりました。

それぞれを見ていくと、違う意味、思想に基づいてこの言葉を使っているように感じたので、「UX」の時みたいにバズワード化する前に ここで言っているものが正しい、これは間違っている、ということではなく、それぞれどういう意味で使っているのかを整理することでdiffをとっておきたいと思いました。

 

1.ISO9241-210で定義されている「人間中心設計」

これが、私が元々知っていた「人間中心設計」です。 

人間中心設計は、システムを使いやすく使い勝手の良いものにすることを企図したインタラクティブシステム開発の一つのアプローチであり、ユーザやそのニーズ、必要条件に焦点をあて、人間工学/労働科学やユーザビリティの知識や技法を適用するものである。

引用元:U-Site「改めてHCDとは何かを考えよう」

ここから、HCDというのはそれ自体が手法ではなく、開発プロセスだと言うことがわかります。

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その目的は開発者とユーザーの間にあるギャップを無くす事にあり、そのために「ユーザー調査に基づく仮説構築」と「ユーザー評価による仮説検証」を繰り返します。

ISO9241-210で定義された「人間中心設計」は、「人間(利用者)を中心に据え、そのニーズやコンテクストを考慮し、デザインに反映するための開発プロセスだと言えます。

 

2.自動車の設計における「人間中心設計」

今年の10〜11月に開催された東京モーターショーマツダブースでこんなパネルを見つけました。

https://www.instagram.com/p/9Xy7LNhzUc/

この単語には反応せざるを得ないっ!w


このことについて、マツダのサイトでは以下のように紹介されています。

自動車のインタフェースは、ドライバーの思い通りに扱えること、安全確実に扱えること、扱う際の肉体的・認知的な負荷を少なくすることが求められます。

サイトの内容から、マツダにおいては「クルマを運転・コントロールすること」「ナビ・オーディオなどを操作すること」「メーター・インジケーターから情報を受け取ること」等に関して、人間工学、認知科学の考えに基づくマンマシンインターフェースの設計思想があるということがあるということが読み取れます。

(マツダの)自動車の設計における「人間中心設計」は、「人間(ドライバー)を中心に据え、その物理的、認知的特性を考慮してインタフェースの設計をするという思想」だと言えそうです。

 

3.自動運転における「人間中心」

前述の東京モーターショー開催時期にこんな記事が報じられました。

自動運転の開発を進める各社のトップが、「技術がいかに進歩しても、運転は完全に機械任せにはならない」「運転の主役はあくまでドライバーである」という考えで一致したことについて触れられています。

自動運転になっても、自動車の扱いにおける責任の所在はあくまでドライバーにあり続けるということを示唆しているようにも読み取れます。

自動運転における「人間中心」は車の運転はあくまで人間(ドライバー)主導であるべきという考え」だと言えそうです。

 

4.都市設計における「人間中心」

さらに、最近こんな記事も見かけました。

記事内では、テクノロジーを活用して都市の中に住む人、離れた都市間に住む人同士のコミュニティが生まれる仕掛けを作り、「人と人との関係性をつなぐ」ことがこれからの都市のデザインであると語られています。

都市内で希薄になった人間同士の関係を、テクノロジーのサポートで復活させようということでしょうか。

都市設計における「人間中心」には「そこで暮らす人、過ごす人を中心にコミュニティが発生する仕組みを考えること」という要素もあると言えそうです。

 

まとめ

それぞれについてまとめてみると、その内容に違いはあれど、それに関わる「人間」にフォーカスしているという部分では共通しているようです。

人間にフォーカスを当て、そこをスタートにしているため、そこからのアプローチにもお互いのノウハウを活かせる余地があるように感じます。そこは業界や思想の「越境」によって成されるのかもしれませんね。

 

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