HDIfes #03「面白いことに育てるために『考える』」を開催しました

hcdvalue、DevLOVE、IGDA日本という、3つの開発者コミュニティが開催する合同勉強会として開催している「HDIfes」も今回で3回目となりました。
イベント告知 http://hdifes.doorkeeper.jp/events/11613
ツイートまとめ http://togetter.com/li/682833

※過去2回のイベント概要はこちら
#01「価値のためのテスト
#02「『ユーザーが毎日使いたくなる』ためにできること

今回は「企画」 をテーマに、各業界での企画の立ち上げ方、進め方、具体的な手段へのブラッシュアップの仕方などのお話が聞けたと感じています。

 ------------------------------------------

DevLOVEサイドからは志田裕樹さんから「現場の開発者でもできるユーザー中心かつ繰り返し型の企画アプローチ」というテーマで講演いただきました。

開発者がもっと企画に関わらなくてはならないのでは?という問題提起から、実際にそれを行うためにはリーン・スタートアップの「繰り返し型のアプローチ」「ユーザー中心型アプローチ」「仮説検証型の科学的アプローチ」を身につけるといいのでは?科学的アプローチによって企画の経験やセンスのない開発者でも取り組めるのでは?という提案に繋がるお話でした。

リーン・スタートアップ導入の際に障害となるもののひとつである「仮説検証する時間やお金がないこと」への対策として、この講演中で紹介された「UX分析支援ツール」は、内容そのものはこちらの「動画眼Note」に近いものですし、やりたいこととしては安藤先生の「エクスペリエンス・フィードバック評価」と同じだなと思います。

こういった手法やツールは元々は「可視化(つまり今まで見えていなかったものを見えるようにする)」が目的で使い始められたもので、まだ評価結果をまとめる方法としては一般的ではないのかなと思っていたのですが、今や開発の効率を上げることを目的にどんどん使っていこうというくらい知られたものになっていたんですね。

そのうち、クライアントの方が新しい手法を知っていたりすることになりそうで、うかうかしていられないなと思いました。

------------------------------------------

IGDA日本サイドからは上原倫利さんから「常識を疑え~ゲームの企画書に望まれるものと期待されるもの」というテーマで講演いただきました。

ゲームの企画書における標準的なフォーマット以下のようなものなのだそうですが、
・タイトル(イメージイラストなどを含む)
・コンセプト(企画概要、どういう面白さがあるか、どういうメカニックスが使われているか)(ゲームにおけるメカニックス、ダイナミックス、アスセティックスの構造「MDAフレームワーク」についてはこちらを参照)
・各要素の説明(モード、インタフェース、アクション)
・ゲームの情報(プラットフォーム、ジャンル、対象ユーザー)

企画書の目的である「アイデアに説得力を与える」「関係者に対する理解、メリットを示す」「リアリティを保証する」を果たしきれていないのではないかという問題提起から、ゲームの企画書に望まれるもの、期待されるものはなにかというお話に繋いでいました。

現状のゲームの企画書は「ユーザーにとってどういうゲームなのか?」という視点で書かれているそうで、ゲームの本質である「面白さ」は企画に関わる人にとって最も知りたいことで、作品として制作・開発する上でユーザーに向けて面白さを感じさせる魅力が書かれていることが企画書に期待されているのですが、その反面で説明しづらい部分でもあり、これがないことでゲームの企画書に説得力が不足することになっているようです。

また「利害関係者にとってどういうゲームなのか?」の視点が抜けており、見積もり、人月計算、マーケティングリサーチ情報、類似タイトルの売上本数など、商品として制作・開発する上で説得力となる、売上が計算できる具体的な数値も必要だと考えているそうです。

(言葉のあやだったのかもしれませんが、ユーザーに対しては「作品」、利害関係者に対しては「商品」としての魅力を伝えることになっているのも興味深いですね)

結果として、この両方の性質を持った「面白さが伝わり、売上も計算できる企画書」が必要で「それはたしかに面白そう、でもそれって売れるの?利益になるの?」という疑問に答えることが必要になります。

IGDA日本代表の小野さんのツイートからも、現状の企画書ではこの疑問に答えきれず、目的を果たしきれていない現状が窺えました。

私はメーカー勤務の人間ではないのでクライアントに対しての「業務提案書」が企画書に相当するのですが、果たしてクライアントの疑問に答えることのできる内容であっただろうかと改めて見直す良い機会となりました。

------------------------------------------

hcdvalueサイドからは安藤昌也さんから「UXデザインとコンセプト評価 〜 俺様企画はだめなのよ」というテーマで講演いただきました。

ゲーム的企画は「俺のアイデア最高!俺の面白いものはみんな面白いよな」というイメージ、UXD的は「ユーザーが欲しいって!調査でわかったことだからこれ絶対!」というイメージであるとして、それぞれ俺様的なところがあるのではないかというお話から、いかにアイデアを作りコンセプトへと磨いていくかが企画のポイントであるとして、その「アイデアの磨き方」についてフォーカスを当てたお話をされていました。
イデアの磨き方として紹介されていた「単なる"アイデア投票”を見直す」という方法と、アイデアをまとめたコンセプトから潜在的な望ましいコンテキストを抽出するための「UXDコンセプトツリー」からストーリーボード、コンセプトテストへの展開が実践的で参考になりました。
また、体験価値レベルのコンセプト評価を伝聞形式のシナリオにし、そのシナリオへの共感度で体験価値を測るという方法が興味深かったです。この講演の後で行われたダイアログには運営スタッフとしての仕事の都合で参加できませんでしたが、「アクシデントにも慌てず対応できる安藤先生カッコよかったね」という振り返りが多かったと伝聞で聞いていますので、かなり高いレベルの体験価値だったのでしょうw

------------------------------------------

ビアバッシュ中に行われたライトニングトークで印象深かったのは田端秀樹さんの「『UXの期間』のループ構造とそれぞれの内容を考察する ~ゲームをネタに」という内容です。

私も過去に「同じUIでもUXは人それぞれ」という話をするためにゲームの例えを使ったことがありますが、UXは概念だけで話すとぼんやりしやすいのでこういった例え話から理解してもらうのが有効だと改めて感じました。
仕事柄、いろいろな業界の方に説明することがあるので、業界別バリエーションも増やしていきたいですね。
------------------------------------------
運営面ではビアバッシュ後の残飯がほぼゼロという快挙?を成し遂げ、会場後片付けに優しい会となりました。これらのノウハウをまとめて技術評論社から「ビアバッシュを支える技術」という本がたぶんいつか出ます。
また、会場を提供いただいたヴァル研究所さんには至れり尽くせりの対応をしていただいたので今後は高円寺に足を向けて寝られません。また次回もお願いします(会場だけ確定) 。
最後に宣伝
2014年7月5日開催の「ゲームコミュニティサミット2014」で、HDIfesの開催を通じて感じている各業界がコラボすることで生まれる価値についてのお話をさせていただくので、興味を持った方はぜひご参加いただければと思います。